
単に「HP制作会社の方にデザインセンスがなかった」という事例もあるので、一概に全部を当てはめるわけではないですが、依頼主の要望を取り入れ過ぎた結果、せっかく程よくバランスの取れていたデザインが、最終的にはグチャグチャになってしまった、というのはよくある失敗例です。
デザイナーは、Webデザインをするとき、2者の立場を考えます。
一つは、クライアントのこと。クライアントの好みというかセンスのことで、こんな雰囲気のホームページにしてほしいというクライアントの望みを満たすことを考えます。
もう一つは、ホームページの訪問者のこと。ホームページにアクセスしてくるお客様の好みやセンスのこと。お客様にホームページで提供する商品やサービスを受け入れてもらえるように、デザイナー自身の経験やセンスもデザインに反映させようと頑張ります。
つまり、デザイナーは「クライアントの要望を満たしながら、お客様のハートも掴めるデザインとはどういうものか?」を考えながらデザインを進めます。
そこで難しいのが、クライアントの要望が、常に、お客様に響くデザインと一致するとは限らないところです。
デザインを進める流れを簡単にあげてみます。

デザイナーは、まず配色やレイアウトを何度も検討し、それから下書きを山ほど繰り返したあと、ようやく形にしたデザインをクライアントの目にさらします。
クライアントは、そのデザインを確認し、例えば「ここの文字をもう少し大きくしてほしい」や「ここの赤を青にしてほしい」というような修正の要望を出します。
修正の要望は、当然クライアント側に認められた権利です。その修正を繰り返すことによって、デザインはクライアントの好みに近づき、最終的に完成の日を迎えます。
しかし、クライアントの要望を受け入れることが、お客様の事を考えたデザインから遠ざかってしまうこともあります。
デザイナーは、今までの経験にもとづき、商品やサービスのイメージに合う配色を考えデザインしました。そのデザインの中で、お問い合わせや注文へと導くボタンはあえて、全体の配色の中で目立つ色でデザインしたのです。
しかし、そのボタンの色が、なんとなく自分の好みとは異なるので、クライアントは修正の希望を出します。

最終的な決定権はクライアントにあるので、デザイナーは渋々、ボタンの色を変えます。その結果、本来得られたはずのお客様からのお問い合わせを激減させる結果になります。
これは一つの例ですが、制作会社とホームページを作成する過程で、往々にこのような事が生じてしまいます。
この失敗を避けるには、クライアントとデザイナーが双方で、互いの意思を正確に疎通できるよう努力しなければなりません。
クライアントはまずデザイナーの仕事を信じましょう。デザイナーは言葉にせずとも、各所に自身の経験とセンスをちりばめています。修正の要望と一緒に、「なぜ、そこはそのようにデザインしたのか?」をデザイナーにうかがってみると、興味深い考察が聞けるはずです。
一方、制作側も、寡黙で職人気質を気取らず、クライアントを納得させられるだけの言葉の力を身につけなければなりません。デザインの理由を明文化して伝えられる能力です。
これからHP制作会社を探そうとしている人は、このコミュニケーション能力も制作会社の検討条件の一つに入れてみてはいかがでしょうか?
「そんなコミュニケーションはめんどくさい!」という人には、自分で作ってしまうというのがいいかもですね。
